ひたち薪能
2004.12


  能について聞いたことがありますか?能は日本の伝統的な舞台芸術の一つで声と歌と踊りが仮面を用いて一体化しています。能は大変高度な種類の詩劇です。能は時にオペラやミュージカルに例えられます。能について語るときは能とセットになって演じられる狂言を忘れてはなりません。狂言は大部分が言葉やせりふによる喜劇です。
  薪能は能と狂言の舞台の周りに薪を焚いて演じる神聖な舞台儀式です。11月3日にこの薪能がシビックセンターの前で演じられました。
  日立は能と狂言に関して長い歴史を持っています。日立シビックセンターの建築時には中に能楽堂を作ってくれるようにと地元の人が5000名の署名を集めました。それがシビックセンターの音楽ホールの中に能の設備がある理由です。今年度までにシビックセンターの中で14公演が行われました。能と狂言の愛好家団体が15回目の公演を野外で行おうと主張したのです。今回団体の15周年と日立市と十王町の合併を記念しての薪能が実現しました。野外のいつもの風景が能の劇場に一変しました。
演目は次のとおりです。

「松風」(能=詩劇)
かつて色男に愛された松風という女性の亡霊が愛する人の着物をまといながら巡礼中の僧の前で狂ったように舞い踊ります。
「ふくろう山伏」(狂言=喜劇)
ふくろうに取り憑かれた兄弟の一人が山伏である医者に治してもらいにきました。ところが山伏の祈りは病を悪化させ、その兄弟までもがふくろうになってしまいます。そしてついには、、、!
この話の結末には何人かの外国人の観客までもが、吹き出して笑っていました。
「高砂」(半能=能の半分)
能作家世阿弥の作品です。この能の一節は結婚式でしばしば引用されます。今回は演目の半分だけを演じる半能という形で上演されました。「高砂」は社会の平和と調和、そして夫婦の愛と長寿を祈る能です。今回の薪能は新たに合併した日立市と十王町の明るい未来を天高く祈りました
<全体を通して>
  能は通常男性の演者によって演じられますが、今回松風役を演じたのは女性の役者で、とても新鮮に見えました。地元の能狂言愛好家によって作られたパンフレットのプロ意識の高さにも驚かされました。 公演スタッフの観客誘導の手際良さにも特筆すべきものがありました。唯一残念だったのは、観客のほとんどが高齢者であったことです。シビックセンターのスタッフから若者への言葉を引用します。「(寝ていてもいいから)一度能を見てみてほしいです。」

伝統行事の目次)   (トップページ

inserted by FC2 system